南九州の山ぶらぶら一人旅

山の日程&コース
8月22日 矢筈岳登山口11:45〜矢筈岳(12:45〜13:15)〜登山口14:00 紫尾山山頂駐車場15:15〜紫尾山(15:20〜15:30)〜紫尾山山頂駐車場15:35
8月23日 稲尾岳登山口(ビジターセンター下)7:15〜稲尾岳(8:55〜9:10)〜登山口10:45 姫門登山口14:15〜甫与志岳(15:15〜15:35)〜姫門登山口16:15
8月24日 姥ケ嶽神社8:00〜双石山(8:50〜9:00)〜第二展望所9:30〜塩鶴登山口10:15 〜姥ケ嶽神社11:00
by 百名山

こんなタイトルにしたのには理由がある。この春、妻と二人で大隈半島の山をいくつか登る予定で1泊2日の旅をしたとき、雨や林道工事中などで全く山に登れず結局観光旅行になってしまった。今回は妻がしばらく不在なのと、お盆が過ぎて朝夕涼しくなり車中泊ができるようになったのとで春のリベンジを思い立ち、前回とは逆のコースで登り残した鹿児島方面の九州百名山を登ることにした。出発は日曜日の朝、月一回の不燃物のゴミ出しが終わってからである。


通行地点
1日目(8月22日)


1.矢筈岳
8時半に家を出て九州自動車道で八代に向かう。八代から水俣へは国道3号線、水俣川を渡るとすぐに県道117号線に入り湯の鶴温泉を通り抜けると矢筈岳登山口がある。準備をして歩き始めるとまたたく間に汗が噴き出す。40分ほどで女岳との鞍部に到着する。「女岳にも登ってください」「女岳まで5分」と土地の言葉で書いた標識があり、登ろうとすると入り口に大きな蜘蛛の巣が張っているのであっさり諦める。鞍部から矢筈岳へはやや急な傾斜となる。山頂は八代海への展望が開けて見晴らしが良い。缶ビールを空け、昼食の弁当を食べて往路を戻り、汗でずぶぬれになった服を着替えて紫尾山に向かう。

県道117号線を南下して国道447号線に出て右折、広域農道で高尾野町に行き、国道504号線を南下して堀切峠から紫尾山頂公園の駐車場へ入る。この山は本来ガイドブックにあるように千尋の滝から登るのが一般的らしいが、今回は時間がないのと、車で登れる山は車で行けるところまで行くことにしているのだ。九州百名山の著者の方はきっと「だーめ、やり直し。」と言うだろうけど。
山頂には数名の観光客がいて眺めを楽しんでいる。東西南北に展望が開けている。山頂を示す標識を探すと石の上にそれらしいものがあった。


2.紫尾山頂のプレート
次の目的地は冠岳であるが、明日のことなのでとりあえずお風呂に行くことにする。そういえば、山頂に居たグループが、入来温泉がどうのこうのと言ってたなあと思い、地図を広げて探すと宮之城から串木野に行く途中にある。国道504号線を南下し、国道328号線に入って入来温泉へ到着。温泉街に入ってしばらく行くと町営のお風呂がある。料金は100円で、沖縄のおばあのような人が番台に座っている。このお風呂は洗い場の前にかかり湯専用の幅50cmほどの細長い浴槽があり、専用の風呂桶が置いてある。水道の蛇口がないので水は使えないが、体を洗うには充分で頑丈で便利なシステムであると感心する。

お風呂を出て入来から国道を南下し、県道42号線、続いて県道39号線の冠岳の横を走りそのまま串木野に向かう予定だったが、道を間違えて県道304号線、308号線を通り市来に出る。国道3号線を北上し串木野へ。海岸べりのねぐらを探すのと、マグロラーメンが目当ての町である。


3.マグロラーメン
コンビニで体格のいい店員さんにマグロラーメンについて聞くと店は4〜5件あるらしい。お薦めの店は市役所の前にあるというので行ってみる。大衆中華という看板とマグロラーメンという旗が出ている。店はほぼ満員で、注文して10分ほどして出てきたラーメンは中華料理屋には似合わない、ずけだれに漬けたマグロが2切れ、南蛮漬けにしたマグロが2切れ乗っている和風の上品でぴりっと辛い不思議な、しかし美味しい味だった。ラーメンをすすりながら明日の予定について考えていると目の前の冠岳を放棄して大隈半島へ向かう計画が浮かんできた。

 今回の目的はあくまで前回のリベンジである。しかし、明日冠岳に登るとその後の移動に時間がかかりすぎて明日の午後は潰れてしまう。移動はなるべく夜の内に済ませておきたい。

ラーメンを食べ終わると国道3号線を鹿児島に向かった。鹿児島からフェリーで桜島に渡る。船の上から対岸の港の近くで花火が上がっているのが見える。船を降り垂水まで来ると対岸の南側で花火が上がり、海沿いの駐車場に見物客が集まり夜店も出ている。花火の上がっている場所は良くわからないが指宿だろうか。駐車場に車を止め花火を楽しむ。夜風が涼しく気持ちがいいので缶ビールを1缶空ける。花火終了後2時間ほど仮眠を取り、国道220号線、次いで269号線を南下し根占町の大浜海浜公園に着く。ここは前回も泊まりに使った場所である。きれいなトイレがあり、正面に開聞岳が見える海岸沿いの駐車場である。再び缶ビールを1缶空け、焼酎をストレートで一口飲むと睡魔が襲ってきた。

2日目(8月23日)


4.稲尾岳山頂の稲尾神社
 朝起きて県道563号線を稲尾岳登山口に向かって走る。缶コーヒーを飲みながら朝食のパンをほおばる。花瀬林道を上がって行くと稲尾岳ビジタセンターの手前に登山口の標識がある。雨は降っていないがガスが濃い。登山口の標高が高いためか気温は低く感じる。最初沢沿いの道を30分ほど、それから普通の登山道になる。自然石展望台に出ると展望がいいはずだが生憎のガスで眺望なし。枯木岳のピークを過ぎ、アップダウンを繰り返すと稲尾岳の山頂、稲尾神社に到着する。この山はガイドブックにあるように登山口から枯木岳東側の三叉路まで1〜99番までの数字が書かれたオレンジ色のプレートがある。そこから稲尾岳までは同じくピンク色のプレートが下がっていて道に迷うことはない。下山は往路を戻り、服を着替えてビジタセンターに立ち寄る。

 この立派なビジタセンターには職員が2名おり、私が「この山の沢蟹は白いですね」と尋ねると、鹿屋を流れる○○川(肝属川だったか?)より南の沢蟹は、色は白いが種類は普通の沢蟹と同じらしいです。花崗岩地帯にいるのでみかげ沢蟹と呼ぶこともあるらしいですと、どことなく宮崎駿監督に似た生物学者風の男性が答えてくれた。なお、この山の沢にはサンショウウオが居るらしい。大きくなると川から居なくなるが子供のサンショウウオならいつでも見ることができる。しかし、九州ではこの沢以外では祖母の沢くらいしか見ることができないとのことであった。


5.甫与志岳山頂
 再び車に乗り県道563号線を南下する。後から考えると北上して国道448号線を内之浦へ向かう方がずっと早かったのだが、何故か直線距離だけを見て県道74号線に入ってしまった。自販機どころかカーブミラーもない延々と続く離合の困難な県道でキセキレイが遊びにくる。車の前に飛び出し何秒間か前を飛んで地面に止まり後ろを振り返る。すぐ車が追いつくとまた車の先へ飛んで逃げるという遊びらしい。こちらがスピードを上げるか、遊び疲れると道路の外に飛んで逃げる。こんなキセキレイとの何度目かの追いかけっこが終わるころ、ようやく国道448号線に出た。

 賑やかで明るい薩摩半島に比べると大隈半島の鹿屋から南は山また山、森また森で人口密度が極端に低い気がする。同じ鹿児島県にありながら、この左右の半島の違いは江戸時代の薩摩の国力によるものだろうかと思えてくる。

次の目的地の甫与志岳に登る前に昼食を取るつもりで食堂を探したが見つからない。国道と県道の三叉路付近のガソリンスタンドで食堂を尋ねると1軒あるらしい。ラーメンと書かれた旗がはためく古い旅館に入ると大広間に通された。味はもうひとつのとんこつ味だったが値段も400円とお手頃だった。前日のマグロラーメンもそうだったが、鹿児島でラーメンを食べると漬物が付いてくる。今回はキュウリのヌカヅケ、串木野では大根。


6.甫与志岳から北側の眺め
前回甫与志岳に来たときは、二股川キャンプ場は閉鎖され甫与志林道は工事中だった。今回は姫門林道からの登山を目指して県道542号線を西から北へ向かう。湯の谷温泉を過ぎてしばらく行くと姫門林道の標識があり、林道の舗装が終わる20mほど先に登山口があった。再び登山靴を履き濡れたヤブを漕いで進むとすぐに汗だくになり、1時間ほどで甫与志岳の山頂に出た。北側と西側のガスが切れ展望が広がっている。しばらく眺めを楽しみ往路を戻る。湯の谷温泉に浸かり汗を流してから来た道を戻り、国道448号線を内之浦に向かって北上する。

志布志湾の巨大な石油備蓄基地を下に見ながらぼーっと運転していると、いつの間にか基地の入り口に来てしまった。守衛さんに「間違えました」と断り基地内をUターンさせてもらう。大隈路を北上し国道220号線を串間に向かう。途中でレストランに入ってとんかつ定食を平らげ日南市を過ぎると睡魔が襲ってきた。鵜戸神宮の駐車場に入り、焼酎のオンザロックを飲みながらいつの間にか眠りに付いた。

3日目(8月24日)


7.姥ケ嶽神社の登山口
 4時頃に目が覚めたのでとりあえず車を宮崎に向けて走らせる。今日の目的の山は宮崎市南部の双石山だ。国道220号線を北上し途中から県道に抜けるつもりだったが、夜明け前の運転で宮崎の市街地まで行ってしまう。国道269号線を南に戻り途中から県道27号線に入って双石山登山口に着く。しかし、再び眠くなり寝てしまう。

もう、この頃になると妻に家を追い出された中年男性の悲哀が全身に漂っている。ゴミと洗濯物が車内のポリ袋に山のように溜まり、服は着替えてもザックは汗臭い。気力がなければ続かない旅行になっている。双石山はガイドブックには塩鶴登山口からのコースが紹介されているが、気力が萎えているので姥ケ嶽神社からピストンする方が楽チンそうな気がしてそちらを選ぶ。この神社の入り口の右側には湧水があり数名の人が水を汲んでいる。先へ進むと道は左右に分かれているので舗装された右へ進む。しばらく行くと姥ケ嶽神社の本殿らしき建物があり、右手に登山道が続いている。道は広くなるが人が歩いた形跡がなくやがて下りになった所で道を間違えたことに気がつく。


8.双石山山頂
再び入り口に戻り、二股を左に進むと登山道らしき道となってほどなく双石山山頂(第四展望所)だ。しばらく休んで朝食のパンを食べていると少し元気になり縦走する気力が湧いてくる。第二展望所への縦走路は馬の背のような場所もあるが、適度なアップダウンを繰り返して山小屋という標識のある山小屋を過ぎ、第二展望所から下りとなって大岩展望台に着く。ここからの眺めはすばらしく、しばし休憩。県道に下山し舗装道を姥ケ嶽神社まで歩いて戻る。汗で濡れた服を着替えて県道27号線を南下し北郷温泉に寄る。この温泉、別名美人湯というらしく肌が最初ぬるぬるして次第につるつるしてくる、源泉51℃のかけ流しの気持ちの良い温泉だった。

その後は飫肥に寄って飫肥城跡の横でつけだれが透明なざるうどんを食べ、飫肥名物の厚焼き玉子とてんぷらを買い求めて都城から高速に乗って福岡に戻った。夕方6時前に帰宅して車の走行距離を見ると992kmだった。今思い出すと、非日常的な3日間がなつかしく思える。紫尾山を除くと山中で人に会ったのは矢筈岳の4名のグループ1回きりだった。人は少なかったが山中ではたびたび森の強烈なにおいに出会った。名前は忘れてしまったが、稲尾岳のビジタセンターに木のにおいを嗅いで名前を当てるコーナーがあり、そのうちの一つのにおいが山中で出会ったにおいに似ていたような気がする。宮崎監督には「また来ます」とお別れの挨拶をしたけれど、広大な照葉樹林が広がる大隈半島の緑の回廊へ再び訪れるのはいつになるだろう。今度は人の通行が少なく藪漕ぎを強いられる道を歩いてみようと思う。できればラブラブで。

HP編集:KURO

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